広報が選ぶ思い出の一台⑫「キャンター」(三菱ふそうトラック・バス)

JAMAブログを監修する各メーカー広報担当者が、クルマやバイクを好きになった、もしくは自動車業界に進もうと思ったきっかけとなった、あるいは業務で携わった「思い出の1台」をピックアップして熱く語ります。
第12回は、三菱ふそうトラック・バスで女性初の報道担当広報に就き、現在もメディアを対象に広報活動に取り組んでいるグローバル広報・マーケティング部の若尾彩子さんです。思い出の1台は、同社がグローバル展開し、2023年に誕生から60周年を迎えた主力小型トラック「キャンター」です。

―三菱ふそう入社の経緯は
「小さいころから『働くクルマ』が好きで、就職の際に商用車か建設機械か造船か、そのどこかのメーカーで働きたいと思っていました。学生時代に海外で勉強し、インターンシップでも広報の仕事に携わっていたこともあり、日本のメーカーでありながら海外事業展開をしている企業、ゆくゆくは商用車メーカーで広報をしたかったからです。2008年に新卒で入社し、海外販売本部で輸入部品や補用部品を中東、アフリカ向けに営業していましたが、いつかは広報をやりたいと希望していました」

―思い出の1台は
「やはり思い出の車両は『キャンター』です。2010年には広報部に配属され、現在までずっとメディア対応を行っていますが、最初の仕事が8年ぶりにフルモデルチェンジした小型トラック『キャンター』の発表でした。商用車はフルモデルチェンジの期間が長いにもかかわらず、商品広報として勉強会、試乗会、発表会と全ての流れを新任時代に経験できました。当時はベテランスタッフがいる中で、若手は1人だけ、しかも入社2年で、仕事のやり方も分からず大変でした。その後、現在に至るまで商品、社内、海外、企業広報を歴任し、気が付くと部内で一番広報歴が長くなってしまいました 」

―広報活動の中で最も印象に残っている出来事は
「キャンターは8代目としてフルモデルチェンジした際、トラックとしては世界初となるデュアルクラッチ式トランスミッションを搭載したことでシフトショックを軽減し、2ペダル式を採用したことでドライバーの快適性と安全性を追求しました。商用車は日々、長時間乗ることになるため、シフトショックが少ないだけでドライバーの負担軽減につながります。技術革新(イノベーション)で、働くクルマがこんなに快適になると感じたのが2010年でした。このシステムとハイブリッドシステムを組み合わせた「ハイブリッド用モーター内蔵デュアルクラッチ式トランスミッション」が世界初の技術として高く評価され、2013年に商用車として初のRJC(日本自動車研究者・ジャーナリスト会議)カーオブザイヤー特別賞を受賞しました」

―その後、キャンターにはEVタイプも登場しました
「2017年には国内初の量産型EVトラック「eキャンター」を発売しました。トランスミッションも1速のシンプルなものになり、シフトショックがほぼなくなりました。新任時代からキャンターを通じて技術の進化を見られた気がします。三菱ふそうとしてはハイブリッドはやめ、EVに舵を切りました。トラックドライバーの方に聞いたことがありますが、EVはシフトショックがほぼなく発進もスムーズで、(従来のディーゼル車と比較して騒音や振動も少なく)車内で外部の騒音も大きく聞こえないため、丸1日乗っていても快適だと言われました」

―キャンターの歴史を教えてください
「キャンターは1963年に生まれ、2023年には60周年を迎えました。70以上の国・地域で販売し、インドネシアでは小型トラックとして50年間トップシェアを維持。現地工場でのノックダウン生産をしています。また、インドネシアでは「コルトディーゼル」の名で長年販売を行ってきたので、現地で「コルト」はブランド問わず小型トラックを指す用語にもなるなど、大変高い認知度を誇っています」

―今後も広報の立場で伝えていきたいことは
「三菱ふそうは6月、トヨタ自動車グループの日野自動車と来年4月に経営統合することで最終合意しました。一緒にどう変わっていくのか、どう強くなっていけるのか、すごく興味を持っています。統合後も引き続き『ふそうブランド』と『日野ブランド』でやっていくため、どうシナジー効果を出して世界で事業展開していくか、さらに統合でトヨタの技術も入ってくるため、どうコラボレーションしていくか本当に楽しみです。また、(ドライバーの労働時間規制で輸送能力が不足する)物流業界の『2024年問題』が懸念される中で、働くクルマに関わる運転手や整備士、営業スタッフなどに対する尊敬の念は常に抱いており、それは仕事をしていく上で対外的にしっかり伝えていきたいと思っています」

RJCカーオブザイヤー特別賞受賞(2012年) 出典・日本自動車研究者・ジャーナリスト会議

ドイツ国際モーターショー(2018年)

〈思い出の1台〉キャンター
車名は駿馬の健脚と軽快な走りをイメージし、英語で馬が駆け抜けることを意味して名付けられました。1963年に誕生し、60年以上の歴史を持つ小型トラックを代表するモデルです。優れた燃費・走行性能や充実した安全・運転支援機能などを備え、物流業界を中心に幅広く活用されています。2017年にはEVタイプの「eキャンター」を発売、これまで40近くの国・地域で世界展開しています。

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思い出の一台アーカイブ – JAMA BLOG一般社団法人日本自動車工業会