広報が選ぶ思い出の一台⑭「Quon」(UDトラックス)

JAMAブログを監修する各メーカー広報担当者が、クルマやバイクを好きになった、もしくは自動車業界に進もうと思ったきっかけとなった、あるいは業務で携わった「思い出の1台」をピックアップして熱く語ります。

第14回は、UDトラックスでブランド・広報渉外部門統括を務める雪下直昭さんです。思い出の1台は、初代が2004年に市場投入された際、営業企画担当としてプロジェクトに携わっていた同社のフラッグシップモデルで大型トラックの「Quon(クオン)」です。 

―クオンとの出会いは

「UDトラックスの前身である日産ディーゼル工業に1993年に入社しました。1999年から販売会社に出向し、三重県でトラックのセールスをしましたが、この経験が私の社会人としての礎になっています。担当した三重県南部や鈴鹿市、亀山市などでお客にも恵まれ、順調に実績が上がりだした2003年に後ろ髪をひかれながら本社部門に帰任したことを鮮明に覚えています。その後、社内でマーケティングに力を入れる機運が高まり、2004年に新設された国内マーケティング部の立ち上げメンバーとして招集され、社運をかけた新大型車クオンのプロジェクトに営業企画という役割で携わりました」

トラックのセールスをしていた時期(2000年)

―クオンプロジェクトについて教えてください

「トラックのモデルチェンジのサイクルは乗用車より長く、10~15年あります。なかなかモデルサイクルのタイミングには遭遇しませんが、私は入社して初めて経験する大型車のモデルチェンジにワクワクして臨みました。クオンは世界で初めて『尿素SCRシステム』と呼ばれる排気後処理技術を搭載した大型トラックです。尿素SCRシステムをトラックに搭載することは全くの新しい技術であるため評価方法も確立されておらず、また、当時は尿素水のインフラが全くなかったため、相当な苦労が待ち受けていることは容易に想像できていました。それでもお客さまのニーズである燃費性能と環境性能の両立に向けては尿素SCRシステムが最善であると考えていました。プロジェクトを進める中では幾多の困難に見舞われましたが、ついに2004年の東京モーターショーでの発表に漕ぎつけることができ、仲間とともに大きな喜びを共有することができました。今ではトラックメーカー各社が同じようなシステムを使っています」

―以前からトラックメーカーに興味があったのでしょうか

「日産ディーゼルを選んだきっかけとなったのは『東京モーターショー』(現ジャパンモビリティショー)です。子どもの頃の夢はダンプの運転手で、もともとクルマ好きでした。モーターショーには何回も通っていて、常に商用車を意識していたわけではありませんでしたが、1991年に日産ディーゼルが出展していたコンセプトカー『アーバンダンプ』に惹かれ、夢のあるクルマを作る会社だと思い門をたたきました」

―モーターショーとの関わりが深いですね

「私と会社との出会いの場となったモーターショーには強い思いがありました。入社以降、人事、国内営業、マーケティングの仕事を経て、2023年からは広報を担当しておりますが、振り返るとそれぞれの立場で常にショーに携わり、その変遷も肌身に感じてきました。直近では、先月ジャパンモビリティショー2025が閉幕しましたが、グループであるいすゞ自動車との共同出展により、よりダイナミックで魅力的な表現が実現できたと思っています」

―国内の商用車メーカーでは、業界を挙げた自動運転の実証などがすすめられています

「物流業界のドライバー不足が続き、その確保も難しい状況にあります。自動化・知能化はその一つの解決策として期待されているだけでなく、安全・運転支援機能にも寄与します。また、商用車のニーズは多岐にわたり、車両やサービスの特性に合わせて最適解の提供が求められます。お客さまに提供する商品・サービスのさらなる質の向上に向けては、個社の取り組みはもちろんのこと、個社の枠組みを超えての取り組みもさらに加速するのではないでしょうか」

〈思い出の一台〉Quon(クオン)と尿素SCRシステム

車名は漢字で書くと「久遠」で永遠に続く時の流れを意味しているほか、「Quality on」の意味も持っています。2024年には初代誕生から20周年を迎えました。

初代発売当時は、ディーゼル車から排出されるNOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質)に規制値が設けられました。クオンは世界で初めて「尿素SCRシステム」を大型トラックで実用化し、国際的に最も厳しいとされた「新長期排出ガス規制」をクリアしたことでも知られています。

尿素SCRシステムとは、エンジン内で噴射される燃料の粒子を極限まで小さくして燃焼効率を高めることで、燃料をより燃えやすくしてPMの発生を抑制。エンジンから排出されたガスに尿素水を加えることで化学反応を起こし、NOxを安全な水と窒素に分解する技術です。

関連リンク

思い出の一台アーカイブ – JAMA BLOG一般社団法人日本自動車工業会

ヒストリー|ジャパンモビリティショー公式サイト