- 2026/07/22
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ミュージアムの歩き方 ④スバルビジターセンター
自動車メーカーが社の歴史や技術、最新の製品などを展示する博物館(ミュージアム)を紹介するシリーズ。第4回は「スバルビジターセンター」です。群馬県太田市にあるSUBARU群馬製作所矢島工場を訪ねました。
※記事中の展示やイベントは取材当時のもの
東武伊勢崎線の浅草駅から特急りょうもうで約1時間30分。太田駅に到着すると、北口にスバル群馬製作所本工場の重厚なビルが目に入ります。スバルビジターセンターを敷地内に構える矢島工場は、駅から自動車で10分ほどの場所にあります。
本工場と矢島工場はいずれも主力完成車工場で、本工場はスバルの前身である中島飛行機の太田工場として開設されてから続く工場です。その住所は「太田市スバル町1-1」。もともとは東本町という町名でしたが、地域のPRに生かしたいという太田市の発案で2001年10月に改称されました。まさに「企業城下町」と言えるでしょう。ただ、 スバル町は本工場の敷地だけで周辺の住所は今も東本町です。

自衛隊の練習機
スバルビジターセンターに到着して建物に入る前に目に留まるのが、紅白にペイントされた航空機です。1962年から2006年まで航空自衛隊のパイロットと航空管制官養成のために使われた模擬機「T-1 ジェット練習機『初鷹』」で、当時、富士重工業(現、スバル)が開発・製造した戦後初の国産ジェット機でした。

スバルの象徴的エントランス
建物に入ると広い空間があり、スバルの特長である「シンメトリカル4WD(4輪駆動システム)」とボクサーエンジン(水平対向エンジン)、そして航空機の翼をイメージしたオブジェが展示されています。100年を超える歴史と最新技術が一堂に会し、来場者を出迎えるエントランスは、まさにスバルの象徴です。

VRで工場見学
エントランスを抜けて広い会議室「オリエンテーションホール」に入りました。ここは、見学コースを映像などで説明する部屋であると同時にVR体験ルームになっています。一人ひとりが専用のゴーグルを取り付け、生産工場見学をVRで体験できます。プレスやボディー溶接組立、塗装、最終部品組立、完成検査の現場が立体的に現れ、実際の工場見学では不可能な至近距離から見ているような映像が目の前で展開されます。子どもたちは思わず手を出してつかもうとしたり、塗装の吹きかけをよけようとしたりするそうです。

名車たちがずらり並ぶ
オリエンテーションホールの奥には展示ホールがあり、往年の名車に会うことができます。最初に待っているのは1958年から69年に製造された「スバル360」。当時は「テントウムシ」の愛称で親しまれた富士重工業初期の代表車で、家庭や個人の自動車「マイカー」の火付け役となりました。まさに、日本のモータリゼーションの幕開けを象徴する国民車ともいえる軽自動車でした。

スバル360 ※施設管理者のご協力のもと、特別な許可を得て撮影しています。
スバル360には、航空機メーカーから引き継がれた技術が詰め込まれていました。量産では日本初のモノコックボディー(フレームレス構造)を採用。鋼板を薄くし、屋根を強化プラスチックにするなどで車内の空間確保と軽量化を図り、車重量385キロを実現した“驚異の作品”といえます。

スバル1000
画期的な技術を初めて搭載した乗用車
スバル最大の特長である水平対向エンジン。ピストンが左右同時に水平に往復するためお互いに振動を打ち消し合い、滑らかでバランスが保たれます。さらにエンジン自体が平らで低く設計されているため、車体の低い位置に搭載することで車両の重心が低くなり、走行安定性が高まるという優れものです。このエンジンを初めて搭載した車が、1966年に発売された「スバル1000」です。国産初の量産FF(フロントエンジン、前輪駆動)乗用車でもあり、当時はどのメーカーもFF車の量産化に成功していなかったことから、画期的な乗用車として注目されました。

スバルレオーネエステートバン4WD
社会インフラのために開発された4WD
国産初の乗用車タイプの4WD(四輪駆動車)を作ったのも富士重工業でした。1972年に発売された「スバルレオーネエステートバン4WD」は、それまでオフロードタイプの4WDしかなかった日本ではセンセーショナルなデビューとなりました。この車の誕生秘話は発売の4年前。東北電力から「積雪地での送電線保守作業用にスバル1000バンを4WD化してほしい」と依頼されたことです。

レガシィツーリングワゴン
最大の変革となった名車
名車展示のタイトルは「スバル 独創の系譜」。スバルの系譜の中で最も大きな変革となったのが1989年、「レガシィツーリングワゴン」の発売です。レガシィは全世界で販売される世界戦略車としてエンジン、サスペンションなど自動車のドライビングを徹底的に追及して完成した新型車で、4WDワゴンがある生活の楽しさを提案したことから「ワゴンブーム」を巻き起こした名車です。レガシィのシリーズは2025年3月までの36年間、スバルブランドをけん引し続けました。


※施設管理者のご協力のもと、特別な許可を得て撮影しています。
産業遺産のバス
展示ホールの一番奥に青とシルバーの鮮やかなツートンカラーのバスがあります。戦後の1949年、当時の富士産業が作った日本初の「フレームレス リアエンジンバス」で、東京都交通局に納品されました。1996年に産業考古学会から産業遺産に認定され、保存されています。

インプレッサ ワールドラリーカー2000
2000年WRC第14戦グレートブリテン優勝車
スバル車と聞いてラリーを思い浮かべる人は多いでしょう。2000年の世界ラリー選手権(WRC)でインプレッサが活躍した印象が強いからに違いありません。第14戦の最終戦グレートブリテンで、スバル・ワールド・ラリー・チームが見事優勝しました。

すばる1500
発売されなかった「幻の名車」
展示ホールで最後に見たのは「すばる1500」です。スバル360の発売より4年前の1954年に富士自動車工業が開発しました。飛行機作りの技術が生かされた画期的な小型車でしたが、諸般の事情で発売されることはなく、「幻の名車」として展示されています。この技術がスバル360に引き継がれたということです。

死亡事故ゼロを目指して
展示ホールにある名車の魅力は語りつくせませんが、後ろ髪をひかれながら2階に上がり、安全技術ギャラリーに入ります。ここでは、人の目と同じように左右2つのカメラによる運転支援システム「アイサイト」の仕組みを知ることができます。前方の自動車や歩行者、障害物を立体的(三次元的)に認識し、その対象物との距離や移動速度を正確にとらえて「ぶつからない」をサポートするシステムです。今では中央に広角単眼カメラも加わって3つのカメラが前方を把握し、アイサイト史上最高の安全性能を実現しています。
スバルは「総合安全」の考え方のもと、さまざまな安全性能を高めたクルマづくりにより交通事故減に取り組み、2030年死亡交通事故ゼロ*を目指しています。目標に向けてこれからも開発が進められていきます。
*スバル車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車などの死亡事故ゼロを目指す。

施設の担当者にインタビュー
工場見学の来場者に歴代の車、他社とは一線を画した個性的な技術、安全への取り組みなどを紹介するために設立された「スバルビジターセンター」。そこでは専任の案内係がスバルの魅力を伝えてくれます。人事総務本部「近隣いちばん係」の遠山茂さんに施設について語っていただきました。
工場見学にVRを導入
スバルビジターセンターは2003年、富士重工業の創立50周年記念事業として開設されました。工場見学は1980年代から受け入れていましたが、近隣の小学校から「小学5年生の『工業』の勉強のために施設を作ってほしい」という要請を受けての設立でもあります。
設立当初は年間10万人を目標に公開、運営しており、これまでに約170万人の来場者がありました。2007年から20年には年間8万人から10万人を受け入れていましたが、その後工場内に開発設備を増設したため、見学コースを複数の工場に分断せざるを得なくなりました。

そこで1年前に導入したのがVRです。これまでの工場見学で、すぐそばで見せることができなかったプレスや溶接、塗装などをリアルに見せる映像を撮影しました。カメラは、危険で人が入れない溶接機械のすぐそばや、塗装を吹きかける工程では車体内に設置して臨場感を出し、今までにない“体感映像”を作りました。カメラが壊れることを覚悟しての挑戦でした。
溶接する部分に接近したり塗装時に車体内に入ったりというのは、当然どの社員も経験がありません。そのためこれらの映像が社内教育用の映像になりました。人が入らないブースの中で仕事するロボットを見て社員からは「こんな風に作業しているとは、知らなかった」などの声が届いています。今では関係会社も含め新入社員の研修に導入しています。
見学者の約85%が小学生です。VRを見ると子どもたちは「おー、すげー」と驚きの声を挙げたり、ロボットのアームが迫ってきて「危なーい」と叫んだりします。今後はVRの設備を持ち出して「出前工場見学」ができるようにし、地域のイベントで活用することも検討しています。また、スバルの柔軟性や拡張性を具現化したBEV(バッテリー式電気自動車)とICE車(ガソリン車・ディーゼル車などの内燃機関車)の混流生産ラインなど、VRコンテンツのさらなる充実も検討しています。生産ラインの進化やものづくりの魅力をより多くの方々にお伝えすることで、地域社会とのつながりを深めながら、スバルのモノづくりを知っていただく機会を広げていきたいと思っています。

進化し続けるアイサイト
施設の安全技術ギャラリーにありますように、スバルは安心安全の取り組みとしてアイサイトを展開しています。左右の“目”があることで前方の障害物を検知し、“ぶつからない”をサポートしています。その研究はさらに深められており、アイサイトは進化し続けています。正面はカメラ(アイサイト)、他方向はバンパー端に組み込まれたレーダーやソナーが安全を確保するために機能します。また、白線が見えない雪道や、道路上の障害物などに対する認識、判断のため、アイサイトにAIを組み合わせたシステムの開発を進めています。これらの研究開発を重ね、スバルは社を挙げて「2030年死亡交通事故ゼロ」*を目指しています。
*スバル車乗車中の死亡事故およびスバル車との衝突による歩行者・自転車などの死亡事故ゼロを目指す。

水平対向エンジン/シンメトリカルAWD
磨かれた基幹技術
安全対策のほかに、基幹技術にも誇りを持っています。独自製品である水平対向エンジンは1966年にスバル1000に搭載してから進化し続けています。エンジンの仕組みが見えるように展示してありますが、このエンジンは対向する双方のピストンが振動を打ち消し合うので、他のエンジンと比べてぶれが少ないのです。加えて、前後左右の重量配分と駆動力配分を最適化するスバル独自の4輪駆動システム「シンメトリカルAWD」を組み合わせることで、低重心かつ左右対称の構造により車両の安定性に寄与し、スバルならではの一体的な走りを提供します。

スバル地域交流会の清掃活動
地域のためにイベントを開催
太田市には、スバルの関係会社が集積していますから、地域貢献には特に力を入れています。硬式野球部と陸上競技部は街を挙げて応援していただけるので、地域還元の役割を果たしています。
また、スバルの取引先であるグループ会社53社が集まり、「スバル地域交流会」を作っています。金山やいずみ緑道の清掃をするボランティア活動やふれあいコンサートの開催、交通安全への取り組みや祭りへの出店などを行っています。
関連リンク
ミュージアムの歩き方 アーカイブ- JAMA BLOG 一般社団法人日本自動車工業会

