二輪車とカーボンニュートラル

この度、自工会二輪車委員会(委員長:日髙祥博/ヤマハ発動機株式会社社長)は二輪専門誌とメディアミーティングをオンラインで開催しました。日髙は二輪車に関する脱炭素の取り組み「カーボンニュートラル(CN)」について以下のように説明しました。

自工会 二輪車委員会 委員長 日髙祥博(ヤマハ発動機株式会社社長)

自工会二輪車委員会では情報を取り巻く環境の変化や多様化に対応すべく、情報発信改革を行ってまいりました。一つ目はWebサイトMOTOINFOをハブとしてSNSなども活用した二輪車を取巻く情報を広く発信することです。二つ目は、メディアの皆様との意見交換の場としてメディアミーティングを開催することです。

本日のテーマである、「カーボンニュートラル(CN)に向けた二輪車対応」ですが、一部の報道機関の方には、5月25日の東京都小池都知事と二輪車委員会との意見交換、また6月3日の自工会記者会見の席上で、二輪車委員会の取り組みの方向性をお伝えさせて頂きました。
本日は重なるところもございますが、二輪車専門メディアの皆様に私より改めて直接お話したいと思います。

まずは、「CNに対しては、二輪車委員会としても全力で取り組む」という方針であることをお伝えしたいと思います。しかしこれは全ての二輪車を電動化するという訳ではありません。


二輪車は安価・軽量・小型であることが求められながら、電動化に必要な大量のバッテリーを搭載するのが難しいという構造上の制約があり、電動化に向けては難易度がかなり高い製品です。

とは言え、国際的な競争力を維持、強化するためには日本国内でも電動化は進める必要があります。このため、電動化への対応は通勤、通学、商用、業務用に使用されるような原付領域について、ある頻度の充電を前提とすれば、電動化できるのではないかと考えています。但し、現状では電動二輪車は普及が進んでいません。また、使われるバッテリーの総量が少ないため、各社が個別仕様で取り組んでも調達面が厳しいという状況です。この課題に対して今取り組んでいるのが、交換式バッテリーの標準化に向けた取り組みです。

一方、レジャーに使用される小型、大型のガソリン二輪車は走行距離が長いため、電動化はより難しくなります。CNは電動化だけでなく、ハイブリッドの他、水素やCN燃料といった技術革新が2050年までには進むと考えており、そういった新しい燃料への対応については各社の技術開発がカギとなるとなることから、個社対応としています。

現時点でもCO2排出量は国内輸送部門全体のわずか0.4%(2018年実績。2019年は0.3%)であり環境優位性が高いといえます。その二輪車に対して新たな環境規制導入はさまざまなコスト上昇につながることが避けられず、ユーザー便益の毀損を生じてしまうことになります。そのため、二輪車委員会としては政府や自治体と連携し、「できることから着実に推進していく」こととしています。

また、自工会として関係省庁に対して要望を提出しています。例を挙げると、二輪車の多様な用途を想定した十分なインフラ整備や、使用環境を踏まえた電動化免除の特例措置などです。
今後これらの進捗状況については十分注視していくとともに、確実に対応していくよう自工会全体で取り組んで参ります。

最後に、先ほど原付領域で交換式バッテリーの標準化による電動車の実現について話しましたが、この取り組み事例として、「eやんOSAKA」実証実験についてご説明いたします。

「eやんOSAKA」は、バッテリー交換の利便性検証、二輪EVの普及と認知度向上、その活用による持続可能な都市交通戦略の検討を⽬的とした産官学のプロジェクトで昨年9月に始まりました。

 

20名による3か月間の利用を1期とし、先月で4期が終了しました。その活動を通じて交換バッテリーの設置インフラだけでなく、いろんな課題が見えてきました。そして、発表当初、実施期間を約1年間とお伝えしましたが、一部の課題対応として実証実験を更に半年間延長し、今月より5期目を開始しています。

これまでの被験者は初めて二輪車に乗る方が多く、その結果ラストマイル領域を超える利用範囲のデータが多くありませんでした。このため、今回より原付二種相当の電動車を追加することで、より広い行動範囲のサンプルデータを収集する予定です。原付二種の被験者は二輪車ユーザーですから、新たな課題が見つかるものと期待しています。

電動二輪車普及のため、それらの課題解決に向け、全力で取り組んでまいります。