自動車技術会が「自動運転AIチャレンジ」を開催

次代を担う技術者を目指せ―。自動車技術会(自技会:大津啓司会長)は11月12日、自動運転のプログラミング技術を競う「自動運転AIチャレンジ2023・インテグレーション大会決勝競技」を、千葉県柏市の東京大学生産技術研究所(柏キャンパス)で開催しました。今回は「小型モビリティにおける工場内での自動搬送」をテーマに、出場者たちは開発したソフトウエアを組み合わせた自動運転車の走行距離を競いました。

自動運転AIチャレンジは、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(サービスとしてのモビリティ)などの新たな技術領域において、自動車業界をけん引する技術者の発掘と育成を目的に、2019年から継続して開催しています。次世代技術、特に自動運転に関しては、人工知能(AI)やICT(情報技術)などが競争領域になる中で、これらの領域に携わる技術者が不足している現状にあります。

同大会は学生だけでなく企業や海外のチームも参加可能なため、AIにおける国際的なイベントとすることで、高い技術レベルの人材育成につなげる狙いもあります。21年度までは年に一度の開催でしたが、22年度より「インテグレーション」と「シミュレーション」の2大会に分け、年に1回ずつ開催する形式となりました。

実車を用いず、システム上でスコアなどを競うシミュレーション大会に対し、インテグレーション大会は自技会が用意した車両に出場チームが開発したプログラムを搭載して実走させます。車両を自動走行させ、完走を目指すには、LiDAR(ライダー)などのセンサー類に関わる知識に加え、AIやソフトウエア、情報処理など多様な知識や技術力が必要になります。

開発したソフトウエアの性能が勝負を左右

今回のインテグレーション大会では、小型モビリティにおける工場内での自動搬送を課題に設定しました。ベース車両であるヤマハ発動機のゴルフカート「AR-04」に、各チームが開発した自動運転ソフトウエアを搭載し、自律走行した走行距離を競い合います。工場内自動搬送で用いられる自動運転システムは、低価格の車両で高いタスク処理能力を実現することが求められます。そのため、限られたコンピューティングリソースとシンプルなセンサー群のもと、「安全性」「可用性」「走破性」の3点をバランスよく実現することが社会実装する上では重要になります。

チームで協力して課題に臨んだ

競技においても、この3点の達成度が評価の基準になりました。工場内では車両と人が混在する走行環境が想定されます。そのため、競技では、段ボールを道路上に配置することで無作為に置かれた残置物を確実に検知し、安全に停車できるかを課題項目としました。

石油化学プラントなどでは、地面付近に設置されたパイプから出る蒸気がモビリティに搭載されたセンサー類の視野を遮ることがあります。競技では、蒸気に見立てた煙を発生させ、視界が悪い中であっても、止まらずに走行を続けられるかを競いました。煙に反応して停車する車両も多く、社会実装のハードルの高さを感じられる課題でした。

視界が悪い中でも走行を続けられるかが一つの判定基準

そして、多くのチームを苦しめたのは、S字クランクと、徐々に道幅が狭くなるL字クランクの2つです。特にL字クランクは、道幅だけでなく直角のコースをはみ出さずに走行することもクリアの条件としており、「速度が速すぎたり、遅すぎたりして停まってしまうケースが多々あった」(自技会関係者)と言います。

難易度が高かったL字クランク

175チームが出場した予選競技を勝ち抜いた16チームが決勝に進出しましたが、ルートの難易度の高さから、残念ながらゴールにたどり着いたチームはありませんでした。

最優秀賞を勝ち取ったのは、中国のソフトウエア企業チーム「IEI_AutoDRRT」です。中国のソフトウエア会社であるインスパーエレクトロニックインフォメーションジャパンに所属するエンジニア2人で構成されるチームで、近年は自動運転車用ソフトの開発も始めたといいます。初出場での栄冠となりましたが、チームリーダーを務めた劉宏鋼さんは、「来年も出場して連覇を狙いたい。チームを増強して、日本以外の大会にも挑戦していく」と意気込みを示しました。

最優秀賞チーム「IEI_AutoDRRT」のメンバー

その他の受賞チームは以下の通りです。優秀賞=「TLAB」(東京大学大学院)、3位入賞=「UCLab_challengers」(名古屋大学)。

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公益社団法人 自動車技術会

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