- 2023/12/21
- JAMAGAZINE, カーボンニュートラル, 電気自動車
EVを正しく理解し、冬のドライブを快適に!
冬になり、今年も車の中で暖房を使う季節がやってきました。ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車など、エンジンを搭載している車は、一般的にエンジンから発生する熱を利用して室内を暖めていますが、エンジンを搭載していない電気自動車(EV/BEV)の場合はどうなのでしょうか。冬場のEVの特性について、EVのパイオニアである日産自動車で、軽自動車のEV「日産サクラ」の開発を指揮した坂幸真さんと、エネルギーマネジメントシステムの開発を手がける土川晴久さんに聞いてみました。
EVは走行用にも使用する電気で熱をつくり、車室内を暖めます。このためEVの場合は、これまで冬場に航続距離が短くなると言われてきましたが、果たしてどうなのでしょうか。
日産自動車第三製品開発部第二プロジェクト統括グループセグメントCVE 坂幸真さん
実際、2010年に発売した初代「日産リーフ」の最初期のモデルでは、冬場に暖房を使用して走行した場合、条件によっては航続距離に大きく影響する場合もあったといいます。このイメージが根強く残っていることによって、EVの冬場の航続距離に対して不安を持っている方や、近年、降雪地域で雪による立ち往生が発生することもあり、心配になる方もいらっしゃると思います。
日産自動車車両計画・性能計画部燃費電費・動力性能計画グループ主管 土川晴久さん
自動車メーカーや部品メーカーでは、ユーザーがよりEVを使いやすくするために、冬場や雪国での弱点を克服することを課題と捉え新しい技術を開発してきました。中でも、土川さんが「最も効果が大きい」と話すのが、ヒートポンプシステム(省電力暖房システム)です。これは省エネ家電や最新の自動販売機にも採用されている車室内を少ない電力で効率的に暖めることができる技術です。初代日産リーフを最初にマイナーチェンジした2012年から、日産のEVにはすべて搭載されています。その後も、ヒートポンプシステムは進化を続け、暖房の消費電力抑制に大きく寄与しています。
例えば、2022年に発売された日産サクラの場合、冬場の航続距離の減少は、日常的な使い方であれば2~3割程度の減少に留まり、減少幅は大きく改善しています。
ヒートポンプシステム採用でEVの暖房効率は向上
また、ドライバーの運転の仕方も、EVの航続距離に大きく影響します。冬場に限ったことではありませんが、EVはパワートレイン効率が非常に高い反面、ガソリン車よりも空気抵抗の影響を受ける割合が大きくなります。したがってスピードを控えめに走行いただくことによって空気抵抗を低減し、ガソリン車よりも効率的に航続距離を延ばすことが可能です。また、ガソリン車同様に急な加減速を避け、減速するときはアクセルペダルを緩める回生ブレーキを活用することにより、減速時にモーターから取り出すエネルギーを最大化できます。
日産自動車ウェブサイトより作成
また、自宅充電時にタイマーやリモコンで充電器経由の電力を活用して乗車前に室内を温めておくエアコンを活用する方法もあります。さらに、シートヒーターやステアリングヒーターは消費電力が少なく、短時間で発熱し、乗員をピンポイントで温めるため、エアコンの設定温度を低めに抑えても快適に過ごすことができます。車両自体の技術進化に加え、こうした賢い節電のコツを実践すれば、もはやEVは冬場や雪国でも安心して乗れる車と言えるでしょう。
シートヒーターなどを使いエアコン使用量を減らすこともポイント
坂さんは、「『暖房の使用が航続距離に影響する』という事実を正しく知ってもらうことが重要」と指摘します。
これは、一般のEVユーザーや購入を検討している方全員が知っている訳ではありません。EVの特性をきちんと伝えることで、EVに効率的な走り方や使い方を広げていくことが大切です。
今後さらに新型のEVがどんどん市場に投入されていくことが予想されます。自動車メーカーは、航続距離を延ばすためのさまざまな技術開発を進める一方、EVの特性を、ユーザーに正しく理解してもらうための情報発信を続けていく必要があります。自工会としても、EVをはじめHV/HEVやPHV/PHEV、FCV/FCEVなどの次代自動車の特徴をユーザーにきちんと理解していただくことで、ユーザーがそれぞれのライフスタイルに合ったパワートレインを正しく選ぶことができ、充実したカーライフを楽しむことができるよう、これからも情報発信を続けていきます。
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