未来を担う学生にエール!大学キャンパス出張授業

自工会は、自動車メーカーの経営トップらが講師となって、将来を担う大学生・大学院生にモビリティ業界の魅力を伝える「大学キャンパス出張授業2023」を開催しました。この取り組みは2013年から行っているもので、23年で10回目を迎えました。「100年に一度」の変革期にあるモビリティ産業の可能性や面白さを、トップらが熱く語りかけました。

スズキ
スズキの鈴木俊宏社長は9月27日、九州工業大学戸畑キャンパス(福岡県北九州市)で、「次の100年に向けた新しい取り組み」をテーマに講演しました。鈴木社長は、「海から陸、山、空まで領域を広げ、スズキらしいモビリティづくりで社会に貢献していきたい」と、これからの抱負を語りました。講演では、電動化への取り組み強化や、既存事業の枠を超えたスタートアップ企業との共創活動、インドでのバイオガス精製などの新たな戦略を紹介。「現状に満足せず、常に進化させる柔軟な発想力と発信力を培って、社会で活躍してほしい」と学生を激励しました。

九州工業大学で講演するスズキの鈴木俊宏社長

鈴木社長の話に聞き入る九州工業大学の学生

三菱自動車工業
三菱自動車工業の北尾光教上席執行役は9月28日、京都大学吉田キャンパス(京都市左京区)で、変動性や不確実性を意味する「VUCA(ブーカ)」を取り上げ、「VUCA WORLDをどう生きるか?」をテーマに講演しました。北尾上席執行役は、変化に向き合うことが重要だとし、「さまざまな経験を通じて感性を磨き、自分だけの物差しを獲得してほしい」とのメッセージを学生らに送りました。三菱自動車で働くやりがいを聞かれた北尾上席執行役は、「他社がチームで取り組むことを、1人で担うこともある。それだけ、権限と自由がある」と答えました。また「大企業、中小企業それぞれに良いところがある。会社選びは、やりたいことができるかどうか、という視点で考えてほしい」とアドバイスしました。また、増岡浩理事チーフエキスパートは、「三菱自動車の主戦場は、東南アジアや南米、アフリカなどの新興国」とし、「悪条件の中で走れるパワートレインを豊富に持っている強みを発揮することで、車はまだまだ進化を遂げる」と話しました。

三菱自動車は、北尾光教上席執行役が京都大学で講演

北尾上席執行役は、変動性や不確実性をテーマに取り上げた

トヨタ自動車
トヨタ自動車の新郷和晃執行役員チーフプロダクションオフィサー・トヨタコンパクトカーカンパニープレジデントは10月11日、慶應義塾大学日吉キャンパス(横浜市港北区)で講演しました。実験都市「Woven City(ウーブン・シティ)」(静岡県裾野市)での実証などを紹介。「将来はクルマが社会システムの一部になる」ことを見据え、「未来をつくるモビリティの可能性」をテーマに語りました。新郷執行役員は、「幅広い技術範囲」「愛が付く工業製品」、また、多くの人に新しい体験と感動を提供する自動車メーカーで働く魅力を伝えました。最後に「持続可能な世界を築いていくことは今を否定すること。それを打ち破る原動力は、皆さんの意思ある情熱と行動だ」と、学生たちに期待を込めました。屋外には「ラリーチャレンジ」に参戦する「ヤリス」を展示しました。

トヨタは新郷執行役員が慶応義塾大学で講演

屋外にはラリーチャレンジに参戦する「ヤリス」を展示

SUBARU
SUBARUの堀陽一執行役員は10月12日、千葉工業大学津田沼キャンパス(千葉県習志野市)で、「スバルのモノづくりと、それを支える人」をテーマに講演しました。堀執行役員はこれまで、「アウトバック」をはじめ、数々のスバル車の開発に携わってきました。学生から今後のマニュアルトランスミッション車の開発について問われ、「マニュアル車は私も好きだ。ぜひ皆さんにも買ってもらいたい」と語りました。堀執行役員は、自身のスバルでの経歴とともに、「人中心の車両開発」や人の感性・特性に寄り添った車両開発を追求するスバルらしい仕事に対する考え方を話し、「社会に出たら人の役に立ってほしい、世界で笑顔を増やしていってほしい」と学生にエールを送りました。屋外には新型「インプレッサ」を展示し、参加者の関心を引きました。

スバルは堀陽一執行役員が千葉工業大学で講演

新型 「インプレッサ」を囲む学生

日産自動車
日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は10月12日、横浜国立大学常盤台キャンパス(横浜市保土ヶ谷区)で、「日産が描くモビリティの未来」をテーマに講演しました。内田社長は事業環境が急速に変化する中で、「今までの延長線上に未来は描けない」と述べ、新たなことに挑戦していく企業姿勢を示しました。学生に失敗談を聞かれた内田社長は、「私のクローゼットにはバンドをやっていた頃の革ジャンを大事にしまっているが、妻から『その服が似合うことはもうないよ』と、断捨離を促された」とのエピソードを紹介。「自分を形成してきた『過去』は正しいものと思いがちだが、それが将来も最適とは限らない。良いものを残し、要らないものは変える。これが非常に重要なことだ」と語りました。

日産は内田誠社長が横浜国立大学で講演

学生の質問に答え、内田社長が失敗談も披露

本田技研工業
本田技研工業の青山真二取締役代表執行役副社長 兼 最高執行責任者は10月16日、早稲田大学国際会議場井深大記念ホール(東京都新宿区)で、「大変革期にあるモビリティ業界の面白さ~新たな技術で社会にインパクトを与えよう~」をテーマに講演しました。パネルディスカッションでは、学生から積極的に寄せられた質問にも回答。「モビリティ業界が社会に与える影響力や面白さ」に関する学生からの問いに青山副社長は、「従来は個人の乗り物であったモビリティが、データやエネルギーでつながっていく社会のなかでのモビリティに変わってきている。モビリティ業界が関わる領域が広がり、産業全体の構造が大きく変わる中で働くことは、毎日多くの学びや気付きがあり、非常に面白い」と述べました。

ホンダは青山真二副社長が早稲田大学で講演

パネルディスカッションでは学生から積極的な質問が寄せられた

UDトラックス
UDトラックスの岸伸彦・開発部門キーアカウントマネジメントバイスプレジデントと、岸本良介・開発部門デザイン部デザイングループシニアデザイナーは10月18日、上智大学四谷キャンパス(東京都千代田区)で、「グローバル環境における商品開発について」をテーマに講演しました。同社は07年から21年まで外資系企業と資本提携をしていたこともあり、働く社員は多国籍です。岸バイスプレジデントは、「いろいろな課題を克服するには、多様な人材の意見が重要だ」と学生に伝えました。岸本シニアデザイナーは、仕事で使っているペンタブレットで車両デザインを披露。「ユーザーが潜在的に持つニーズをいかに引き出し、商品に落とし込めるかが問われる」と語りました。


UDは岸伸彦バイスプレジデントが上智大学で講演

岸本良介シニアデザイナー(前方・右)はペンタブレットでデザインを披露

いすゞ自動車
いすゞ自動車の津山浩一開発部門VPは10月20日、東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)で、「いすゞの先進技術の取り組み」をテーマに講演しました。いすゞは、物流の効率化、カーボンニュートラルの実現に向けて、自動運転、コネクテッド、電動化、代替燃料等の先進技術への取り組みを加速させ社会課題の解決を目指しています。津山VPは、eコマース(電子商取引)が急速に拡大していることについて触れ、「荷物が運べなくなると、社会には大きな影響がある」と、商用車メーカーに課せられた使命の重要性を強調しました。

いすゞは津山浩一VPが東京工業大学で講演

商用車メーカーの使命の重要性を説明

日野自動車
日野自動車の脇村誠CTO(最高技術責任者)は11月7日、電気通信大学(東京都調布市)で「2024年問題?カーボンニュートラル?技術で挑む商用車の可能性」をテーマに講演しました。脇村CTOは、スズキとヤマハ発動機で、二輪車の燃料噴射システムの開発などを手がけた経歴があります。脇村CTOは「(商用車メーカーは)社会システムの一部を自分たちがつくっているというワクワク感がある一方、緊張感や責任もある」と仕事の醍醐味を語りました。講演終了後、「EVの開発のポイントは何か」「(自動車の)開発の道に進みたいが、大学院に行くかどうか迷っている」など、熱心に質問する学生の姿が多く見られました。屋外には、超低床小型EVトラック「日野デュトロ Z EV」を展示し、学生が興味深げに質問する姿がありました 。

日野は、脇村誠CTOが電気通信大学で講演

超低床小型EV トラック「日野デュトロ Z EV」に学生が関心

ヤマハ発動機
ヤマハ発動機の日髙祥博代表取締役社長は11月10日、東京理科大学葛飾キャンパス(東京都葛飾区)で、「『モノづくりの喜び』を原動力に、人と社会の幸せを描く~ゲンバ発 自由闊達な企業風土~」をテーマに講演しました。日髙社長は、「これだけは負けたくない、というコア技術の掛け合わせによって感動を生み出す製品をつくり続け、そのチャレンジで獲得したリソースを次の製品につなげる。そういったイノベーションとスピンアウトを繰り返してきた」と同社の強みを語りました。技術・研究本部AM開発統括部の山崎美希さんと、同本部技術開発統括部の篠原功次さんも登壇しました。山崎さんはNHKで放送された技術開発番組の裏話を、篠原さんは23年秋に開催された「ジャパンモビリティショー2023」に出展した「モトロイド2」の開発秘話を披露しました。


ヤマハは日髙社長が東京理科大学で講演

「モトロイド2」の開発秘話も披露した

三菱ふそうトラック・バス
三菱ふそうトラック・バスの松永和夫代表取締役会長は11月16日、山梨大学甲府キャンパス(山梨県甲府市)で、「新たな時代に入る産業政策と自動車産業―三菱ふそうトラック・バスのCN(カーボンニュートラル)への挑戦」と題し、講演しました。松永会長は、「(日本が)失われた30年から決別する潮目の変化が表れている」とし、産業政策の観点から、「日本の自動車産業は、これからも世界で最も強い産業であり続けたい」と述べました。講演には恩田実開発本部エンタイヤービークル開発統括部長も登壇しました。恩田統括部長は、二酸化炭素(CO2)の排出削減に向け、EV、 FCV、水素エンジン車の3つのアプローチを挙げ、「こうした異なる技術がそれぞれ得意とする分野で使い分けられるようになる」と解説しました。

三菱ふそうは、松永和夫会長が山梨大学で講演

恩田実統括部長はCO2排出削減のアプローチを解説した

マツダ
マツダの中山雅デザイン本部長は12月12日、東京都立大学日野キャンパス(東京都日野市)で、「社会におけるパーパスをデザインから考える~いきいきとする体験をお届けしたい~」をテーマに講演しました。4代目(現行)「ロードスター」の開発に主査として携わった中山本部長は、発売に至るまでの過程やロードスターに対する思いを伝えました。中山本部長は、「いい車を開発するためには、エンジニアとデザイナーが共通のパーパス(目的)を持つことが重要」と話しました。「ジャパンモビリティショー2023」で披露したコンセプトカー「アイコニックSP」のデザインの狙いについても触れ、学生が興味深く聞き入りました。屋外には、歴代のロードスターを展示しました。

マツダは中山雅本部長が東京都立大学で講演

歴代のロードスターを展示

約4カ月間にわたり開催した大学キャンパス出張授業。今回もモビリティ業界に関心を持つ多くの学生が参加し、講演や展示を通し、メーカーの経営トップらと交流しました。自工会では、これからも未来を担う若者に向け、モビリティ業界の魅力を発信していきます。

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