後編:JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024 企業マッチングで成果

自工会は10月15~18日まで「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024(ジャパンモビリティーショー(JMS)ビズウィーク2024)」を開催しました。初の試みながら会場は多くの方で賑わい、企業同士のマッチングが多数成立しました。その様子を2回に分けてお伝えしています。
(前編:JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024 レポート ~ 未来を語るモビリティ会議)

後編ではビジネスマッチングや出展企業のブースの様子、来年のJMSの開催情報などについて取り上げます。

◆848件のマッチング成立!

JMSビズウィーク2024には、145のスタートアップ企業、58の事業会社が出展しました。スタートアップと事業会社のマッチングを支援する専用プラットフォーム「Meet-up Box」には1,891社が登録し、848件のマッチングが成立しました。

会場中央のビジネスマッチングエリアでは常に活気に満ちた商談が行われていました。Meet-up Boxはイベントの閉幕後も利用可能なため、今後も継続的に事業共創へ活用していければと考えています。

盛り上がりを見せた商談スペース

◆自動車メーカーもブース出展

自動車メーカーも自工会会員企業による合同展示としてカーボンニュートラル(CN)に向けた多様なモビリティを展示したほか、個別のブースで〝事業共創のタネ〟を紹介し、新しいパートナーを探しました。

展示が目立ったのはCNの実現に向けた製品・技術やサービスです。

カーボンニュートラル実現に向けたモビリティが多数出展された

いすゞ自動車UDトラックスは共同で自動運転とコネクテッドサービス、CNの3テーマを紹介しました。いずれもいすゞグループが2030年に向けた中期経営計画で掲げている重要テーマで、スタートアップ企業や社会に向けて、取り組みを訴求しました。中でも「いすゞの未来社会マップ」の展示が目を引いていました。街中や郊外をトラックやバスが走る様子とともに、車両と荷主や運送事業者が通信技術で繋がるコネクテッドサービスやEV充電ステーションを中心としたエネルギーマネジメントまで、同社が考える未来のくらしに貢献する物流や人流の取り組みをアピールしていました。

EVバスも人気を集めた

社会課題解決に向けた方針を紹介したいすゞ・UDトラックスブース

トヨタ自動車は、カーボンニュートラル社会実現に向け、エネルギー供給の安定性と環境負荷低減に寄与する「水素社会実現に向けた取り組み」「再生可能エネルギーマネジメント」に関する取り組みを出展しました。特に注目されたのは、災害時などに水素ステーションがない場所でも水素をエネルギー利用できる「ポータブル水素カートリッジ」で、耐久性を確保した上で8.5㎏という持ち運べる重量にした点が特徴です。また、会場ではリンナイと共同開発した水素調理器も展示され、水素カートリッジの調理実演では、会場を訪れた副会長の佐藤恒治が水素で焼き上げたトーストを味わい、「とてもおいしい」と感想を述べていました。

さらに、トヨタ独自の電池制御技術である「スイープ技術」を用いて、中古の電動車用電池を蓄電システムに活用するシステムも紹介されました。再生可能エネルギーの発電量が不安定になることが多いため、重要な「調整力」を中古電池で賄うことで、電力の安定供給と再エネの普及に貢献していきます。

水素エネルギーで焼いたあんトーストを食べる副会長の佐藤

日産自動車は電気自動車(EV/BEV)を使った新しいサービスなどを紹介しました。その一つが「Nissan Biz Connect API」。EVのデータをカーシェアリング事業者やタクシー事業者の運行管理・配車システムにAPIで連携させることで、充電残量に応じた最適な配車計画の作成などに活用してもらいます。会場で紹介した企業や自治体向けのエネルギーマネジメントサービス「ニッサンエナジーシェア」などと合わせ、EVを使った新しい提案に力を入れていきます。

EVを使った新しい提案に力を入れる日産

三菱自動車も電動車の普及を促すためのさまざまなサービスを紹介しました。例えば、MIRAI-LABOと共同開発した自律型街路灯。日中に太陽光発電した電力をプラグインハイブリッド車(PHV/PHEV)の使用済み電池に蓄電し、夜間はその電力でLED照明を点灯します。使用済み電池のリパーパスによる二酸化炭素排出量の削減、脱炭素社会の実現に貢献します。このほか、ゼンリングループと提供する「EV行動分析レポート」や三菱商事などと共同開発したスマート充電サービスなどもパネル展示しました。

自律型街路灯などを展示した三菱自動車

三菱ふそうトラック・バスは、FUSOブランドのスローガン「Future Together」をテーマにCN達成に向けた製品やソリューションを展示しました。ブースでは、EV小型トラック「eキャンター」をベースに開発した自動追尾型EVゴミ収集車の実証実験の映像を流し、作業員の後を車両が自動走行で追尾する様子を紹介し、多くの来場者が関心を示しました。EV関連では、三菱自動車と三菱商事とともに設立したイブニオンが手がけるEV関連サービスのプラットフォーム「イブニオンプレイス」や、ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービスアジアが展開するeキャンター専用のリース「FUSOグリーンリース」の内容も展示しました。

三菱ふそうトラック・バスのブース

小型モビリティも自動車メーカー2社がブースに展示しました。スズキは、開発中の水素を燃料とした荷役運搬車と電動パーソナル/マルチユースモビリティの「SUZU-RIDE/SUZU-CARGO」を展示しました。荷役運搬車は、2022年12月から湖西工場(静岡県湖西市)に3台を導入して実証中です。担当者は「燃料電池(FC)システムの小型化やコストに課題がある」と述べ、JMSビズウィークでFC技術を持ったパートナーを探しました。

スズキはSUZU-RIDE/ SUZU-CARGOやFC技術の協業相手探し

一方、スズライド/スズカーゴは四輪タイプの特定小型原動機付き自転車です。商品化を目指し、「実証試験場所や協働パートナーとマッチングしたい」(担当者)としてブースに並べました。

本田技研工業は、椅子型のハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE」を紹介しました。これは、人の姿勢をセンサーで検知し、その傾きなどから人の意図を理解して動くモビリティです。長時間の歩行に自信がない人の移動をサポートできるモビリティですが、ホンダは両手を使える特徴を生かした新しいサービスの提供も検討しています。例えばVR技術を組み合わせることでゲームにも活用できるといいます。そうしたパートナーをJMSビズウィークで探しました。

ホンダが出展した小型モビリティ

このほかにもさまざまな切り口で共創パートナーを探す自動車メーカーもありました。SUBARUは運転が楽しくなるドライブアプリ「SUBAROAD(スバロード)」や独自の先進安全機能「アイサイト」でのAI(人工知能)の活用といった取り組みを訴求しました。「スバロード」は位置情報と連動してドライブコースの歴史を解説したり、ふさわしい音楽を流すといった機能で新たな価値の創出を目指しています。カーナビのように最短ルートを示すだけでなく、より楽しいドライブの演出を狙っています。ブースでは同社が考える今後の「モビリティUX」についても紹介し、「安心と愉しさ」を軸に「情緒的価値」、「技術的価値」を高める方向性を示していました。実現に向けて、今後も仲間作りの輪を広げていく考えです。

新たな愉しさを創出するアプリ「SUBAROAD(スバロード)」

ダイハツ工業は「地域が抱える課題に対する研究開発」をテーマに、「移動の困りごと解決の支援」や「人手不足の解決の支援」などの取り組みを展示しました。例えば「移動の困りごと解決の支援」では、自動運転のカメラ技術を生かし、視覚障がい者向けの移動支援機器を開発。首かけタイプのカメラで自動車や人などを検知し、音や声、振動などで危険を知らせます。同じく人手不足の解決でも自動運転技術を生かした取り組みを紹介。自動搬送車(AGV)で自社の人手不足解決に活用する考えを示しました。

ダイハツ工業は移動の困りごとや人手不足の解決支援などの取り組みを展示

マツダは同社のパーパスである「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」をテーマに、デジタルを活用したモデルベース開発(MBD)や、スタートアップ・学術機関との研究成果など、自社の取り組みや今後の目指すビジョンを示しました。ブースでは「『さりげなく』人や社会の状態を理解し、支援してくれる」技術を今後求めているとのメッセージを掲示しました。「乗れば乗るほど元気になる」体験の実現へ、乗員や周辺環境のセンシングなどで運転が苦手な人でも安心してドライブできるといった体験の創出を目指しています。

デジタルを活用したモデルベース開発(MBD)を訴求したマツダ

◆カーボンニュートラル実現に向けた乗用車、商用車、二輪車を展示

合同展示スペースでは「All roads lead to the future.」と題し、自工会の会員メーカーがCNに向けた多様なモビリティを展示しました。カワサキモータースは2024年1月に発売したEVモーターサイクル「Ninja e-1」を展示しました。EVならではの力強い加速や微速で前・後進し駐車場などでの取り回しをサポートするウォークモードが特徴です。こうしたモビリティには多くの来場者が実際に乗りこみ、先進性を体験していました。

カワサキモータースが1月に発売したEVモーターサイクル「Ninja e-1」

日野自動車は小型BEVトラック「日野デュトロ Z EV」のウォークスルーバンを展示しました。環境負荷軽減だけでなく、EV専用のシャシーを用いたことで床面地上高400㎜(定積時)を実現し、作業員の乗降時の負担を軽減したといいます。

EV専用シャシーを用いた「日野デュトロ Z EV」

また、ヤマハ発動機は研究開発中の小型低速EV「DIAPASON C580」を展示。ホンダの「Honda Mobile Power Pack e:」を搭載し、充電時間のストレスを軽減していることとさまざまな路面環境を走ることのできる走行性能を特徴としています。

ヤマハ発動機の小型低速EV「DIAPASON C580」

賑わいを見せた自動車メーカーの合同展示ブース

◆ビジネスチャンス探る部品メーカー

今回のイベントの主役は自動車メーカーだけではありません。日本自動車部品工業会(部工会)もブースを設け、さまざまなサプライヤーとの協業のチャンスとあって、併催の「CEATEC(シーテック)」の来場者からも注目を集めていました。部工会会員企業ブースで出展していた内装部品メーカー「しげる工業」の担当者は次世代車のコックピットを開発するためのセンシング技術を持つスタートアップの共創パートナー候補を会場で見つけたと話していました。

自動車部品メーカーも出展

◆スタートアップのブースも見どころ満載

スタートアップ企業も先進的な技術やアイデア、モビリティを紹介していました。会場の中で特に目立っていたのは実演エリアなどに展示していた電動モビリティです。例えばLean Mobilityが初公開した前二輪後一輪の小型EVが「Lean3」です。トヨタで「i-ROAD」を手がけたエンジニアが起業して開発したモビリティだけに完成度は高く、来場者の注目を集めていました。

電動モビリティを手がけるスタートアップはこの他にも数多くJMSビズウィークに出展しており、販売・サービス体制の拡充や、次世代モデルの開発に向けたパートナー探しを行っていました。

注目を集めた電動モビリティ

◆来年のJAPAN MOBILITY SHOW 2025(JMS2025)は10月30日から開催!

自工会は今回のJMSビズウィークでのマッチングの成果を来年開催する一般ユーザー向けの「JMS2025」でも紹介する予定です。JMS2025については、初日の未来モビリティ会議の特別セッションの中で青山真二モビリティショー委員長が「多くのお客様にモビリティの未来を感じていただくためのショーケースにします」と紹介。「共創」を共通のテーマとして3つのキーワードをベースにプログラムを用意します。

1つ目のキーワードは「FUTURE」です。モビリティの未来の姿を軸として、日本の未来にワクワクを感じてもらい、JMSや世の中への共創機運を醸成します。シンボルコンテンツとして、昨年の来場者アンケートにて体験者の内、約9割の方々にご満足いただいたTOKYO FUTURE TOURがさらにパワーアップし、未来の東京を疑似体験していただきます。

2つ目のキーワードとなるのは、「CULTURE」です。四輪・二輪をはじめとしたさまざまなモビリティの魅力に焦点をあて、モビリティ自体がもたらす価値への共感を醸成します。

3つ目のキーワードは「CREATION」です。日本経済を明るい方向へ向けていくために、今回のJMSビズウィークで生まれたような、モビリティを軸にした事業共創をさらに推進します。

お子さまに楽しんでいただけるコンテンツやフードコンテンツも充実させ、誰もが楽しめるイベントになるほか、「共創」をテーマに、大迫力でワクワクする自動車メーカーブースも展開され、より進化したJMSをお楽しみいただけます。

来年のJMSは10月30日~11月9日まで、東京ビッグサイトを中心に開催する予定です。

初の試みとして試行錯誤しながら進めてきたJMSビズウィーク2024ですが、出展者や来場者の多くから「想像以上に多くのビジネスパーソンが来ていた」、「普段、接点のない会社との出会いがたくさんあった」とポジティブな感想をいただきました。来年のショーケースイベント、再来年のビジネスイベントへと継続的に開催し、豊かで夢のあるモビリティ社会の構築に向けた共感の輪を広げるコンテンツとして今後もJMSを発展させていきます。

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