広報が選ぶ思い出の1台④SUBARU(スバル)広報部長 大村雅史(おおむら・まさふみ)

JAMAブログを監修する各メーカー広報担当者が、クルマやバイクを好きになった、もしくは自動車業界に進もうと思ったきっかけとなった、あるいは業務で携わった「思い出の1台」をピックアップして熱く語ります。その第4回は、スバルの大村雅史さん。企業の顔となる広報部の部長を務め、自動車と航空宇宙事業の情報発信とともに社内外とのコミュニケーションの要を担っています。大村さんの思い出の1台は、モータースポーツ競技の使用を前提として企画された2001年発売の「インプレッサWRX STi type RA spec C」です。

―クルマとの出会いは

2000年に群馬製作所へ異動したタイミングで、大学時代の友人に誘われてジムカーナの競技会に参加しはじめました。学生時代に、自動車のサークルでサーキットを借りた走行会の企画などを一緒にしていた時の仲間です。競技を始めた当初は知り合いから格安で譲り受けた古いインプレッサWRXで参加していましたが、走行距離を重ねた古い車体は、競技用としては限界に近づき思うような結果が出せていませんでした。そのような時に発売されたのがインプレッサWRX STi type RA spec Cです。2代目となるインプレッサのWRXシリーズに設定されたモータースポーツ・競技向けグレードで、モデル名に付随するtype RAは”Record Attempt”の略で記録への挑戦を指しており、最後の「spec C」は日本語で競技や競争を意味するコンペティションの頭文字です。名前が表す通り、レースやラリーなどの競技に使用することを前提にした「ベースモデル」です。当時は三菱自動車のスポーツモデル『ランサーエボリューション』とライバル関係にあり、両社で開発競争を繰り広げていました。そうした中で280馬力のエンジンと、エアコンやパワーウインドウ等の快適装備から遮音材に至るまで取り除き、標準車に比べ車両重量を70kgも軽量化した“スバルの気合”に惹かれて新車で購入しました。

―競技向け車両を購入し取り組んでいたジムカーナの魅力は

ジムカーナという競技は、クルマの性能だけで容易に結果に繋がる訳ではありません。コースやパイロンレイアウトは毎回異なり、コースの攻略の正解が分からない状態で始まります。大会ごとにコースを覚え、短時間で攻略方法を考え、ドライビングテクニックを競い合う。これがジムカーナの難しさであり魅力だと思います。車両重量の軽さを追求したインプレッサはコーナー数が多く、ハイスピードのコースを得意としていました。当時は日本自動車連盟(JAF)の公認レースや練習会へ参加していましたが、その中で車の特性やコースを考え、ドライビングテクニックを追求できることに楽しみを感じて、ジムカーナを続けていたのだと思います。

競技の思い出を熱く語る大村さん モータースポーツの経験が業務にも生かされているとのこと

―競技以外での思い出は

競技向けのモデルでも公道走行は可能でしたが、街乗りとしての乗り心地を追求したモデルではなかったため、競技会場などへの移動の際、車内にはオーディオの代わりにラジカセを、エアコンの代わりに扇風機を持ち込んで凌いでいました。そのような車だったので手放すまでに、妻が助手席に乗ってくれたことはほぼありません(笑)。助手席には常にレース用のタイヤかラジカセが「同乗」していました。

―現在のモータースポーツとの関わりは

最近までは、本社に在籍している有志の社員でつくるチームで、軽自動車の耐久レースに参加していました。参戦車両はスバルの「R2」です。コロナ禍以降、活動は休眠していますが、いずれは再開できればと思っています。また、広報部として、自動車ジャーナリストの皆さまとクルマの性能・走りの特性などについて、より専門的に踏み込んで会話し、意見を伺うことができるため、これまでのモータースポーツの経験が役立っていると感じています。

スバルのジムカーナイベントに参加した時の1枚

〈思い出の1台〉

2000年に発売された2代目「インプレッサ」の「WRXシリーズ」に設定された「STi type RA spec C」。競技分野の使用を前提に運動性能を追求し、徹底した軽量化とエンジン性能の強化で動力性能を向上させるとともに、シャシーの大幅な改良などで高い操縦安定性を実現させている。また、競技向け装備の充実を図るなど、競技ベース車としての潜在能力を高め、速さを極めたモデルといえる。

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思い出の一台 アーカイブ – JAMA BLOG 一般社団法人日本自動車工業会