世界に挑んだ日系自動車メーカーの情熱に触れる!トヨタ博物館で企画展開催

80〜90年代、若者たちの話題の中心はクルマとバイクでした。日本の自動車メーカーは、走りで世界の頂点に立つべく技術の挑戦を続けていました。若者の情熱、技術者の製品にかける想い、それぞれが呼応し、大きな熱狂を生み出していました。

愛知県長久手市のトヨタ博物館では、当時の技術者たちに焦点を当てた企画展「熱狂を生む技術者たち-’80-’90年代日本のクルマとオートバイ-」が開催されています。

転換期を迎えた自動車業界が、次の100年を見据えるために紡がれた“温故知新”の本企画展は、国内メーカー8社の協力により、トヨタ博物館初となる本格的な二輪・四輪同時展示として実現しました。

トヨタ自動車社会貢献部博物館グループの鳥居十和樹プロフェッショナル・パートナーは、今回の企画展について、技術者たちが「世界に挑戦する」という情熱を持ってモノづくりを進めていた80〜90年代を、改めて見つめ直したいという思いからスタートしたと語ります。

企画展の入り口では、深くバンクしたヤマハ「RZV500R」とマツダ「サバンナRX-7」が来場者を出迎えます。ワインディングを競うように走る迫力ある展示は、本企画展のハイライトのひとつです。

このダイナミックな展示は、単に車両を提供するだけでなく、スタンドの製作やマネキンの服装、姿勢や視線にまでこだわった各社ミュージアムの協力によって実現したといいます。

各社の協力で生まれたものは、展示の工夫に留まりません。モノクロを基調とした展示空間に浮かび上がる言葉の数々は、当時の技術者の方々へのインタビューや、各社の担当者との対話、後述する「物語」などから、’80-‘90年代の開発部門の空気を表すものとして特に抜き出されたキーワードです。

四輪の展示車両は、日本車がその経済性や耐久品質だけでなく、走行性能や技術でも世界最高水準を目指したこの時代の象徴的なハイパフォーマンスモデルが7台そろい踏み。

同館初の本格的な展示となる二輪は、海外のレースで大活躍したマシンの市販モデルに加え、「Ninja」や「KATANA」といったペットネームを冠し海外で人気を博した車種など、世界での日本車の地位を不動のものとした大型バイクを中心に12台が展示されています。

今回の企画展に合わせて開催された講演会「榊原館長が聴く!」では、日産「スカイライン( R33/R34型)」開発責任者の渡邉衡三氏が、開発当時の想いを語りました。

「80年代後半に会社の商品ラインナップの方向性に危機感を持った設計のエンジニアが発起人となり、ボトムアップで『90年までにハンドリング性能世界一を達成する』と役員に提案して始まったのが『プロジェクト901(P901活動)』です」と当時の開発背景を振り返ります。「P901活動が体現された車種として、欧州向けが『プリメーラ(P10型)』、北米向けが『フェアレディZ(Z32型、現地名:300ZX)』、国内向けが『スカイライン(R32型)』といえます。」

では何をもって『世界一』とするかについては、検討を重ねた結果、「世界一過酷なサーキット」といわれる独ニュルブルクリンク北コースでの周回タイムを目標値として設定することに。

R32 型スカイラインの実験主担を経て、R33型の商品主管を任された渡邉氏。開発にあたり、「最大のライバル」に据えたのは世界中のどのクルマでもなく、グループAレースで29連勝を記録した先代のR32型 そのものだったといいます。

R33型スカイラインGT-R開発当時、社内には「R32の GT-Rは10年に一度出るか出ないかの名車なのだから、次期型はしばらく必要ないのではないか」という声もあったといいます。しかし渡邉氏は、2代目GT-R(KPGC110 型)からR32型誕生までに16年もの空白期間が存在したことに触れ、「ここで途絶えたら、また同じ苦労を繰り返すことになる」と感じたことから、次の世代へ技術を繋いでいかなければならないという強い思いがあったと語りました。

また、R32 型よりも車両サイズと重量が増加したR33型には、「大きくなって走らなくなった」というイメージも付きまとっていました。そうした声に対し、渡邉氏は「エンジニアを舐めるな、という意地があった」と振り返ります。

その思いのもと開発されたR33型GT-Rは、ニュルブルクリンク北コースで先代の記録を21秒更新する7分59秒を記録しました。この記録は、自らの技術や商品、そして会社に対する誇りに裏打ちされた「技術者の意地」と言えるでしょう。

展示では、「第2世代GT-R」の集大成となるR34型GT-R VスペックⅡが展示されています。このほかにも時代を象徴する名車たちが、当時の技術者たちの開発にかける想いを伝えています。一方、「物語」と銘打たれたリーフレットには、車両提供を行った各社ミュージアム担当者が本企画展のために書き下ろした展示車両の開発エピソードが収録され、情熱を込めて人が創ったものであることを実感できるようになっています。

今回のトークショーに続き、6月6日(土)には、マツダ「ロードスター(ND型)」 開発責任者を務めた山本修弘氏の登壇も予定されています。

7月12日まで開催される本企画展。珠玉の名車たちはもちろん、開発シーンの記録写真とキーワードで整えられたモノクロ基調の展示空間、そして各社担当者が当時の開発部門を振り返り執筆した「物語」リーフレットを通じて、80〜90年代の技術者たちの熱量に触れてみてはいかがでしょうか。

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