青少年のための科学の祭典 ものづくりやクルマの面白さを発信

自工会は、7月末に科学技術館(東京都千代田区)で開かれた「青少年のための科学の祭典2024全国大会」にブースを出展しました。ものづくりの面白さや自動車の奥深さを感じてもらうためにさまざまな体験企画を用意し、大勢の親子連れにご体験いただきました。

同イベントは、日本科学技術振興財団が将来を担う子どもたちに科学技術への関心を高めてもらうため、毎年夏に開催しています。自工会の出展は今回が初めてで、トヨタ自動車三菱自動車工業日産自動車スズキ日野自動車いすゞ自動車マツダの計7社が参加しました。

自工会人財部会【技能系】採用課題検討ワーキンググループ主査の小竹隆行(トヨタ自動車技能系人事室長)は、出展の背景について「小さい頃にものづくりの楽しさを知ってもらい、将来は自動車業界で働くことも視野に入れてくれたら」と語ります。国内の年間出生数がピーク時の半数以下になるなど少子化は加速しており、今後は各業界の間で若年人財の採用競争がさらに激しさを増す可能性があります。自工会は、今回の出展が日本の基幹産業の担い手育成にもつながることを期待しています。

トヨタは「空力ボディー、クルマにはたらく空気のチカラ」をテーマに、自動車の形と空気抵抗の関係を学べる企画を用意しました。風洞実験の装置にクルマの模型を入れ、風にドライアイスの煙を乗せることで空気の流れを視覚化しました。子どもたちは画用紙とはさみを使ってオリジナルの自動車の模型を制作し、風洞実験装置に入れて空気抵抗の程度を計測しました。この作業を通じて、空気の働きは車両の安定性や燃費、静けさなどにどのように影響するかを体験してもらうことを目的に企画しました。子どもたちは模型の改良を繰り返して、より空気抵抗の少ないクルマを作ることに挑戦しながら、空力学の基本を学ぶ貴重な経験をしていました。

画用紙でクルマを作る子どもたち

空気抵抗と車両の関係を考えるコーナーは、三菱自動車も出展しました。空気抵抗の大きさがクルマの形にどの程度影響するのかを、古いモデルと最近の車両で比較しました。来場者は同社社員のミニ講義を聞いた上で、ペーパークラフトで100年前のクルマと現代の自動車を組み立てて、それぞれにモーターを取り付け、扇風機で発生させた風に向かって車両を走らせることで走行の違いを比較しました。ブースでは、画面を活用しながら三菱自動車の会社紹介も行い、工場の場所や、三菱自動車のマークである「スリーダイヤ」の由来などを紹介しました。

空気抵抗とクルマの関係を学習

レンチによるボルトの締め付けを体験するコーナーも見られました。1台の自動車を製造するには多くの部品が必要で、それぞれの部品と部品を組み合わせるためにボルトが使われます。日産は、同社の工場で使用しているボルト締め付け訓練台を会場に持ち込み、ボルトの締め付け体験を実施。締め付けるための工具としてトルクレンチや電動インパクトレンチを用意し、工具によって締め付け方が異なることを紹介しました。特に電動インパクトレンチは締め付けにかかる時間が短く、子どもたちは性能の高さに驚いた様子を見せました。また、工具を使わずに指でボルトを締め付けるやり方も体験し、工具の利便性や重要性を学んでいました。

電動工具でボルトを締め付け

スズキは、ボルトの締め付け体験に加えて車体の塗装の構造が理解できるコーナーを用意しました。台座の穴に向かってインパクトドライバーでボルトを取り付ける作業では、スズキの社員が慣れない子どもたちの体験を丁寧にサポート。取り付ける位置に対してボルトを垂直にすることなど、さまざまなアドバイスを行いました。塗装の構造を理解する体験では、塗装済プラスチック板のクリア塗装面に傷を付け、コンパウンドクリームを付けた後、ウェスを使ってクリームをふき取り、傷が消えているかどうかを確かめる作業を行い、最上層はクリア塗装面となっていること、自動車の塗装は何層にも分かれていることを学びました。

ボルトの締め付けを体験

日野は、トラックやバスの開発においてCGソフトやゲームエンジンなどが使われていることを紹介しました。子どもたちは同社の小型電気トラック、コミュニティバス、レーシングトラックの中から好きなクルマを選んでぬり絵をしました。完成した作品に画像処理を行い、立体的に加工した車両を大画面に投影しました。自分の描いた車両が画面上の市街地や砂漠などのバーチャル空間を走行する様子に子どもたちは大興奮。画面を背景にした記念撮影では子どもたちの笑顔が弾けました。ブースでは同社のラグビーチーム「日野レッドドルフィンズ」の選手も姿を見せ、来場者の目を引いていました。

ぬり絵体験は大人気

いすゞは、「取り出せない3重のキューブキーホルダーをつくろう!」と題したコーナーを出展しました。来場者はマイナスドライバーと小型ハンマーを使って3重構造のキューブを作りました。治具にキューブをセットし、子どもたちは自分の手を叩かないように注意しながらハンマーで治具を叩く作業を繰り返しました。制作したキューブキーホルダーはプレゼントされ、子どもたちは喜んでいました。

キーホルダーづくりに挑戦

マツダは鋳造と呼ばれる、溶けた金属を型に流し込んでオリジナルのキーホルダーを制作する体験を用意しました。子どもたちは計量カップや突き棒などを使って砂型を作り、溶かしたスズを砂型に注ぎました。その後はスズを取り出し、切断機でミニカーの形に整えた後、砂を落とし、ヤスリで側面を削って仕上げました。鋳造はマンホールなど身近なものの製造に使われており、子どもたちは形が無いところから形あるものを作る作業に面白さを覚えた様子でした。

砂型を作る子どもたち

イベント当日は厳しい暑さの中、大勢の親子連れが足を運びました。整理券が早々に配布終了となるブースも多く、主査の小竹は「もともと自動車に強い関心がない人にも大勢足を運んでいただき、とても良かった」と笑顔を見せていました。

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