「学生フォーミュラ2026」8月開催! 次世代担うエンジニア育成へメーカーが支援

公益社団法人「自動車技術会」が主催する第24回「学生フォーミュラ日本大会2026」が8月2~7日、愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo、愛知県常滑市)で開催されました。大学・専門学校の学生たちが「ICV(ガソリンエンジン車)」と「EV(電気自動車)」の2クラスに分かれ、自作フォーミュラカーで走行、性能を競う大会。車両の設計・製作からドライバーまで全て学生たちが取り組み、今年はICVクラスに54チーム、EVクラスに23チームが参加し、6日間にわたる猛暑下での〝熱戦〟が繰り広げられました。

学生たちは毎年、年間を通じて車両開発に当たります。審査では、参加校をベンチャー企業と想定し、コスト、設計などを評価する「静的審査」と、加速性能、燃費・電費などを判定する「動的審査」が行われます。

その〝バックステージ〟では、自動車メーカーが次世代のモビリティ産業を担う学生たちを支援しており、今回は参加チームに対する各社のさまざまなサポート活動について紹介します。

トヨタ自動車

毎年約60人の運営スタッフを派遣。「未来のエンジニアを育成する場」とも位置付けており、これまで300人を超える学生フォーミュラ出身者が入社し、エンジニアとして活躍しているそうです。

大会会場の京都工芸繊維大学ピット

トヨタは昨年からEVチームのサポートに取り組んでおり、今年はトヨタ名古屋自動車大学校や京都工芸繊維大学に eアクスル (駆動ユニット)、バッテリーを提供。中部地域の大学を中心に、設計・製作の講習会のほか、大学を訪問しての溶接の講習会を実施、輸送費の負担が大きい北海道や九州の大学に対しては車両輸送も支援しています。

トヨタ担当者は「学生フォーミュラのEV参入のハードルを下げたいとの思いもあり、バッテリーはモジュールで、 eアクスル は親しみやすいようパッケージにして渡している」と話しています。

九州4チームの車両輸送

ただ、それだけでは学生の裁量範囲も限られるため、来年以降はモーター、インバーターは同じものを提供し、パッケージを学生たち自身が担うことで、チームのマシンにフィットした eアクスル に仕立ててもらう支援も計画中。〝優秀なエンジニアの卵〟を育てつつ、安全面、機能面でアドバイスする役割を担っていく考えだそうです。

学生チームとの関係については「モノだけ渡すのではなく、エンジニアが定期的にオンラインなどで直接やり取りし、設計の困りごとを聞いたり、アドバイスをしたりしている」などと技術的指導の重要性を指摘。定期的なコミュニケーションの場をつくることで、トヨタとして充実した支援体制を整えていると説明しています。

日産自動車

車両設計・製作に必要となる車体やサスペンション、操安性能などの基礎知識を伝授する「日産サポート講座」、EV製作で学生の皆さんの疑問が多い電気回路について実技を交えて講義する「EV回路製作講座」、そして大会会場で生じたトラブルを迅速にサポートする「電気修理工房」などを毎年実施しています。

日産製フォーミュラ車両

新たな取り組みとして、運営に関わるメンバーにも自らの〝学びの場〟を設けています。自分たちの手で実際に学生フォーミュラ車両を製作することで、学生たちの困りごとや要望を深く理解し、より良いサポートにつなげることを目指しています。

新コンパクトユニット

今回、その活動の成果の第一弾として、モーター、インバーター、減速機をコンパクトにパッケージング化し、車両への搭載のしやすさを大幅に改善したEV用コンパクトユニットをチームに提供できるようになりました。

日産は「引き続き学生の皆さんの素晴らしいクルマづくりをサポートしていきます」(担当者)とコメントしています。

本田技研工業

25年間、ホンダを定年退職した元社員で構成されるボランティア団体「マイスタークラブ」と連携し、学生フォーミュラ活動を積極的に支援しています。

実技支援の様子

クラブには現在約20名が在籍し、エンジン、足回り、車体フレーム、治具設計、溶接技術など各分野のエキスパートが長年培った経験と知識を次世代へ伝えています。

支援内容としては、フォーミュラカー製作に必要な座学講座に加え、エンジン整備や溶接等の実技指導、さらに300人以上が参加するモビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)での試走会の機会提供など多岐にわたります。

大会の修理工房

ホンダは「年間を通じて学生の挑戦を後押ししています」と説明しており、社内プロジェクトとしてEVチームへの技術支援活動も行っているそうです。

スズキ

大会審査員や運営スタッフとして社員が参加し、学生フォーミュラ活動を支えるとともに、学生のアイデアや技術力に触れながら交流を深めています。社内の学生フォーミュラ経験者などによる技術アドバイスのほか、技術講習会、合同活動報告会なども開催、学生がものづくりをより深く学べる機会づくりに力を入れています。

エンジン技術講習会

大会会場のスズキブースでは、新開発した800ccクラス2気筒エンジンのカットモデルを展示し、多くの学生たちの関心を集めました。車両開発に携わった技術者との活発な技術談義も繰り広げられ、さながら本格的な技術講習会の様相を呈していました。

サステナブル燃料をはじめとした環境負荷低減技術と高性能の両立を実証するスズキの取り組みとして、今年の鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦したCN(カーボンニュートラル)チャレンジ車両も展示。スタッフから「またがり体験ができます!」と声を掛けられ、「本当ですか⁉」とうれしそうな反応もあり、学生たちの思い出づくりにも一役買っている様子でした。

スズキ担当者は「これからも学生たちの挑戦を応援しながら、次世代のものづくりを担う人財の育成に取り組んでいきます」と話していました。

ブースでの車両展示

ダイハツ工業

テストコースに希望大学を招いて「試走会」を開催しています。滋賀テクニカルセンター(滋賀県竜王町)で年2回(夏・秋)、九州開発センター(福岡県久留米市)で年1回実施。コースで実際に車両を走行することで、新しい課題の発見やマシンの調整を学生にしてもらうことが狙いです。

滋賀テクニカルセンターでの夏の試走会は2日間設定されています。希望学生には隣接するダイハツ寮に宿泊でき、夕食の際には社員との交流を図るためビンゴ大会なども催しているそうです。

試走会での記念撮影

このほか、ダイハツ技術者が直接指導する「溶接講習」や「安全講習会」、「自動車構造基礎勉強会」もそれぞれ年1~2回行っています。

各種支援活動には、関西地区(中国地方含む)や九州地区の各大学から学生が集まっており、ダイハツは「多くの学生に参加していただき、毎年好評を得ています」(担当者)と話しています。

溶接講習の様子

いすゞ自動車

第1回大会から毎年途切れることなく大会運営スタッフを派遣。現在ではグループ各社からも参加し、いすゞグループとして学生たちの挑戦に向き合っています。

大会には毎年、それぞれの専門性を持つ約20人の社員がスタッフとして幅広い役割を担っています。大切にしている考えは〝学生が主役〟。スタッフからは「緊張した表情で審査に臨んでいた学生が審査後のフィードバックの際に笑顔を見せてくれることが大きな喜びです」との声が聞かれます。

大会で指導する技術者

商用車メーカーならではの取り組みが大型観光バス「ガーラ」を活用した〝避暑バス〟です。コース脇に冷房を効かせた車両を設置し、学生や観客、大会スタッフら誰でも利用できる〝クーリングシェルター〟として開放。バス車内では、いすゞ社員が疲れて眠ってしまった学生をそっと見守ることもあれば、「自動車業界って楽しいですか?」と相談を受けることもあるそうです。

会場に置かれた避暑バス

いすゞは「これからも学生フォーミュラへの取り組みを通じて、次世代のモビリティを担う学生たちと向き合い、ともに学びながら、未来を創っていきます」と強調しています。

マツダ

「学生自らが企画・設計・製作した車両でものづくりの力を競う大会」として、個別チームへの支援ではなく、大会全体を支える活動に継続して取り組んでいます。その一環として、「ドライビング講習会」を毎年開催。今年は3月にマツダのテストコース・美祢自動車試験場(山口県美祢市)で行い、今回大会にエントリーした6大学12人の学生が受講しました。

講演の様子

講習会では、マツダのレース活動や商品開発への理解を深める講演に加え、「ロードスター」を用いた運転技能訓練を実施。オーバル走行、8の字走行、ジムカーナ、サーキット走行などを通じて、速く安全に走るための基礎と、車両特性を把握することの重要性を体感してもらいました。走行データを活用した指導も行い、学生が大会での走りだけでなく、今後の車づくりにも生かせる〝学びの場〟としています。

ロードスターなど体験試乗

ヤマハ発動機

第1回大会から協賛を続け、学生たちの「ものづくり」への挑戦を支援しています。社内横断組織である「学生フォーミュラ支援タスク」を中心に、エンジンや周辺部品の支援、技術アドバイス、安全指導を行うほか、強度・車体・エンジンに関するオンライン講習会や、学生を本社に招いたエンジン分解・組み立て講習会など、実践的な〝学びの場〟を提供。

またエンジンクラスだけでなくEVクラスへの挑戦を後押しするため、モーターやモーターコントローラーの貸与など、電動車両向けの支援も行っています。

千葉大学へのICV支援

支援組織は部門横断で約50人のメンバーで構成されており、エンジン・モーター支援校ごとに学生フォーミュラ経験者の若手社員が窓口となり、学生に寄り添った支援を実施。こうした活動は学生の成長だけでなく、支援する社員自身の人財育成や部門を超えたネットワーク形成にもつながっています。

スタッフによる車両確認

ヤマハ発動機は「今後も、未来のエンジニア育成とモビリティ産業の発展に貢献していきます」(担当者)と話しています。

今年の学生フォーミュラは、ICVクラスで、同志社大学が昨年の総合2位から順位を上げ、初の総合優勝を果たした一方、5連覇をかけた京都工芸繊維大学は惜しくも2位に終わりました。EVクラスでは、名古屋大学が4連覇を達成、9回目の総合優勝を成し遂げました。

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